本コンクールについて

「全世界人物写実油絵コンクール」は、新唐人(NTD)テレビが主催する国際的な文化芸術コンクールの一つであり、世界中のアーティストが自身の才能を発揮し、写実油絵という伝統芸術へ回帰するためのプラットフォームです。

コンクールは、応募作家が純粋な真、善、美の表現を趣旨とし、正統的アカデミー派写実技法による「光明」「正義」「善」「美」といった伝統的な価値観を持つ人物油絵作品の創作を求めています。

応募資格

1.専門の美術学校や美術団体に所属する美術教師、クリエイター、学生、およびプロとしての水準を持つ美術愛好家。
2.本年度コンクールの審査員でない者。

申込とコンクールの流れ

1.申込書類の提出

1)応募締切日:2023年6月15日(暫定)

2)申込書類

  1. a. 有効な身分証明書(パスポート、運転免許証など写真付きのもの)のコピー

  2. 応募作品のタイトル、使用された画材、完成時期、サイズ、創作構想などの説明(100文字以内 母国語で可。英語が望ましい)。

  3. 応募作品の写真(データでの提出。ファイルサイズは30MB以内)。
  4. 履歴書(個人的な主な経歴や受賞歴を含む)。
  5. 注意事項:授賞式や関連イベントに出席するため、米国入国ビザを必要とする応募者は、申込書の提出時にその旨を明記してください。大会組織委員会は、入選の通知とともにビザに必要な証明書類を添付します。

3)一部の応募者の特殊な事情を考慮し、このコンクールでは雅号の使用を認めます。雅号の使用を希望される場合は、エントリーの際に雅号を使用する旨を記載いただければ、公の場(メディアでの報道、図録など)で使用いたします。

4)参加費:75米ドル(1点目の作品)。2点以上の作品をご応募頂く場合は、作品1点ごとに15ドルが加算されます。お支払いには、クレジットカード、トラベラーズチェック、現金小切手がご利用いただけます。

5)小切手の宛先: NEW TANG DYNASTY TELEVISION
NTD Figure Painting Competition」と明記してください。

6)申込方法:

  1. オンライン登録:オンラインで直接申込書を記入してください。
  2. 電子メール:オンラインでの登録ができない方は、以下の電子メール宛に応募書類を提出してください: oilpainting@globalcompetitions.org

7)応募締切日までにすべての申込書類の送付と参加費用の納入が無かった場合、参加資格は無効となります。

8)組織委員会に提出された申込書類は返却しません。

9)日本国内のお問い合わせ窓口
電話:03-6806-8902
Fax: 03-6730-2861
アメリカのお問い合わせ窓口
電話:1-888-477-9228( 中,英語対応)
FAX: 1-888-600-1998( 中,英語対応)

2.入選

1) 組織委員会は、2023年6月30日(暫定)までに入選作品を発表し、入選審査結果を電子メールで通知します。
2) 入選作品は書留で委員会に郵送してください。2023年8月1日(暫定)必着。宛先:23 Center Street, Middletown, NY 10940, USA
宛名:Organizing Committee of The 6th NTD International Figure Painting Competition

3)注意事項:輸送中の作品の安全性を最大限に確保するため、適切な保険への加入をお勧めします。輸送中の作品原画の破損について、組織委員会は責任を負いません。大会組織委員会は、作品原画の受領後10日以内に開梱し、状態の確認を行います。
4)郵送方法について
a. 方法1:額縁付きで郵送する。
b. 方法2:キャンバスの額付きで郵送する(額縁の費用は出品者の負担となります)。
c. 方法3:筒状に丸めて郵送する(キャンバス張りと額縁の額装費用は出品者の負担となります)。
d.出品者が作品の郵送方法を決める際の参考として、スポンサーが提供する額縁の優遇価格の一部を以下に示します。
18x24インチ(45.7×61センチ):150ドル
24x36インチ(61×91.4センチ):225ドル
36x48インチ(91.4×121.9センチ):350ドル
48x72インチ(121.9×182.9センチ):550ドル
e. キャンバス用の木枠の製作とキャンバス張りの費用は、額縁の費用の約10分の1です。 その他のサイズについては、作品の大きさに応じて見積ることができます。正確な価格は、入選作品のサイズと額縁の種類に応じて額装専門業社が決めます。

3.展覧・授賞式・関連活動

1)新唐人第六回「全世界人物写実油絵コンクール」の入選作品展は、2023年10月にアメリカ・ニューヨークで暫定的に開催される予定です。(開催日・開催地は未定)。
2) 組織委員会は、入選作品の展覧会場において授賞式を行います。
3)展覧会期間中、組織委員会は作品鑑賞や交流などの活動も行い、芸術創作における経験を交流し、伝統的な文化や芸術への回帰を研究討論します。関連するスケジュールは入選通知に添付され、コンクールの公式サイトで公表されます。
4) 図録の贈呈:展覧会および授賞式に参加する入選作家全員に、「2023年全世界人物写実油絵コンクール」の図録を展覧会場で贈呈します。 展覧会にお越しいただけない入選作家には、送料をお支払いいただくことで、図録を無料でお届けします。

4.作品原画の取り扱い

1)展覧会終了時に出品者が自ら回収します。
2)組織委員会が一時保管し、展覧会終了後30日以内に出品者に返送します(梱包、輸送、郵送、保険の費用は出品者の負担となります)。出品者の都合により期限内に作品を返却できない場合、組織委員会は1日あたり10ドルの延滞保管料を徴収します。
3)出品者は組織委員会に作品を寄贈することも可能です。主催者は収集証明書を発行します。
4)注意事項:入選作品の原画を郵送する際は、原画の取り扱い方法を明記してください。

5.宿泊と交通機関の手配

1)コンクール組織委員会は、ニューヨークで授賞式などの活動を参加する入選作家とその同伴者に宿泊ホテルを推薦することが可能です。
2)ニューヨークでの授賞式などの活動に参加するための全費用は参加者の自己負担となります。

6.著作権の扱い

1) 応募者は、応募作品に対して完全に法的責任を負い、応募作品の著作権とそれに付随する各権利は作者に帰属します。 本コンクールの組織委員会は、応募者の意図的または非意図的な過失について、いかなる法的責任も負いません。
2)コンクールの主催者は、入選作品著作権の使用権を有するものと致します。作品原画およびその複製品が販売された場合、出品者には協定に基づいて相応のロイヤリティが支払われます(詳細は別途協議のこと)。

7.賞

金賞(1名):賞金10,000米ドル、表彰盾、賞状
銀賞(2名):賞金 3,000米ドル、表彰盾、賞状
銅賞(3名):賞金 1,500米ドル、表彰盾、賞状
技法傑出賞(数名):賞金1,000米ドルと賞状
人文傑出賞(数名):賞金1,000米ドルと賞状
新鋭傑出賞(数名):賞金1,000米ドルと賞状
優秀賞(数名):栄誉証書

8.その他

1) 作品を応募した時点で、応募者は本コンクールのすべてのルールを無条件に受け入れたとみなされます。
2) 応募者は、本コンクールの組織委員会が定めるすべての取り決めに従わなければなりません。違反があった場合、組織委員会は参加資格と賞を取り消す権利を有します。他人の作品の盗用、模倣、詐称行為等を行った場合は、自身の費用と責任において解決をしなければなりません。
3)コンクール期間中のすべての音楽・映像の著作権は新唐人テレビに属します。
4)コンクール審査員の決定は最終的なものとみなされ、いかなる異議申立てにも応じません。
5) 組織委員会は、本コンクールの規則を解釈する最終的な権利を有し、規則を変更する権利を有します。
6)規則に変更がある場合、公式サイトの掲載に準じます。

 

また:

技法傑出賞:1,000米ドル(各)

人文傑出賞:1,000米ドル(各)

新鋭傑出賞:1,000米ドル(各)

優秀賞:栄誉証書

アート&カルチャー
映像:コンクールの趣旨と表現

新唐人テレビが主催する「全世界人物写実油絵コンクール」の趣旨は何でしょうか?

コンクールの審査委員長は写実技法と含蓄の重要性を強調し、更に優れた作品を作成するための鍵を強調しました。

映像:コンクールの回顧

2008年以来、新唐人テレビは「全世界人物写実油絵コンクール」を5回開催し、世界中のより多くの画家がコンクールの使命である「純真、純善、純美」を理解し、賞賛できるようになりました。このコンクールを通じて、多くの画家が社会に対する責任や歴史的使命を認識するようになりました。

「人物写実油絵」について

油絵は、西洋絵画の歴史の中で、最も普及し影響力のある絵画の様式です。伝統的な西洋絵画の多くは油絵で、神や天の美しさ、聖人の徳や行い、自然や民俗の美しさを表現した題材が多いです。その中でも特に人物をテーマとするものが多く、技法は西洋の写実的な技術の素晴らしさを際立たせています。

写実的な絵画が誕生して以来、油絵は、未熟から成熟へと発展し、時代ごとに異なるスタイルを経た後、人間の認識の変化に伴って写実性を徐々に放棄し、最後に基準のない現代美術へと発展していくという栄枯盛衰の歴史をたどってきました。しかし、芸術には基準があり、人々を昇華させる純粋な善良さや美しさを持つ芸術だけが、真にいつまでも衰えず存続することができると信じています。時代を越えて残された古典的な芸術作品には、古代人の知恵、才能と心血,そして人類が高く評価する『真・善・美』という永遠の価値観が見て取れました。 人々が美的価値や判断力を失った今、この貴重な遺産は、人類が芸術的正統性の価値を取り戻すための重要な基準となっています。

芸術創造に関して、古人に学ぶことは本質の理解なく表面的に古典をなぞることとは違います。歴史上のいくつかの文化的ピークは、先人の文化遺産という肥沃な土壌に根ざし、開花して実を結び、再び新しい局面を創造してきました。アーティストには、それぞれの個性、思想や感情、創作理念、そして時代環境の影響があります。理想を抱くクリエイターは必ず、それをいかに選択し、時代の意味と組み合わせて、自分の道を切り開くかを知っています。新唐人テレビが主催する「全世界人物写実油絵コンクール」の趣旨は、純粋な真、善、美の正統芸術の価値を取り戻すことであり、芸術家が自らを浄化し、技法を向上させる機会を提供することです。

ここでは、独自の必然性と深遠な意義を持つ正統派油絵の遺産と価値を改めて見直してみたいと思います。

1.写実[1]は、西洋の正統的な芸術の特徴と尺度

西洋美術は古くから視覚的リアリティを実現するため自然物の真に迫る模倣を重視してきました。そのため、「写実」は芸術家の技法を測る基本的な基準でもあり、西洋美術の最大の特徴でもあります。このような「写実」精神の起源は、古代にまで遡ることができます。エジプトの王妃ネフェルティティの生気あふれる胸像から、ギリシャとローマの芸術における写実的で理想的な彫刻作品まで、いたるところにその例を見ることができます。

しかし絵画に関しては、古代絵画の媒材や技法に限界があったため、「写実的で真に迫る」にはまだ一定のギャップがありました。絵画がかつてないほどの栄光を手にしたのは、コンセプト、技法、媒材の面で飛躍的な進歩を遂げたルネッサンス期になってからです。 ルネッサンス期の絵画の写実的な成果は、主にいくつかの方面に現れています。

1. 絵画を平面的な2次元空間から仮想的な3次元空間へと拡張する遠近法の使用

2. 物体の立体感や重量感をよりリアルに表現できる光と影の明暗変化の表現技術の熟達

3. 解剖学の発展による人体の正確な構造と多様なポーズへの深い理解

4. 人間の内面の状態や感情の真に迫る描写

5. 物体の質感の繊細さとリアルさ。

このようなルネッサンス期の写実的な成果は、その後数世紀にわたり西洋の正統派絵画の基礎を深く築き、同時に写実主義絵画の基準を確立しました。もちろん、写実主義の成功と媒材の進歩は密接に関連しており、特に油絵の発明はその中でも重要な役割を果たしました。

2.油絵の繁栄と輝き

起源

太古の昔から人類は物体を塗装するための媒材として油を使用する方法を知っていました。初期の頃は、油は彩色された彫刻やテンペラ画の光沢剤としてのみ使用されていました。 15世紀初頭、フランドル地方のファン・エイク兄弟(兄フーベルトと弟ヤン)は、実験を重ねた結果、テンペラ画に使われる卵黄や卵白の代わりに、亜麻仁(アマニ)油やナッツ油に樹脂を混ぜて、緩やかに乾く安定したメディウム(顔料と混ぜる溶剤)を開発しました。 この改良されたメディウムは、画家に繊細な質感で描くための時間を与え、よりゆっくりと乾燥させることで、繊細で透明感のある、明るく鮮やかな効果をもたらしました。

これらの利点はテンペラやフレスコには無かったもので、この画材は登場後、絵画業界の主流になりました。特に画家たちが写実性と完成度を追求したルネッサンス期において、油絵の登場はまるでタイミングよく天から与えられた贈り物のようで、絵画の外観も変わりました。

初期油絵は北方ヨーロッパ特有の細密な写実的伝統の継承

ヤン・ファン・エイクは精緻な描写が得意な写本画家でした。油絵の媒材を改良した後、彼は北方国際ゴシック様式と油絵の技法を融合させ、木製のパネルに「宰相ロランの聖母」や「アルノルフィーニ夫妻像」など、明るく澄んだ細密画の傑作を生み出しました。

画家は根気よく細部まで油絵で描き、密度と奥行き感の相乗効果により、絵の質感はこれまでにない精緻さとリアリティを実現しました。もちろん、ファン・エイクをはじめとする北方の画家たちの写実性は完全ではありませんでした。絵の質感は繊細ですが、人物の表現は硬く渋すぎ、特に人体のプロポーションや美しさという点では、イタリアの画家たちとの間に大きなギャップがありました。

イタリア画家の発展

1475年、フランドル絵画の影響を受けたイタリア画家アントネッロ・ダ・メッシーナ(Antonello da Messina 1430〜1479)が、初めて油絵の技法をヴェネツィアに持ち込み、その後、油絵はイタリア全土に広まっていきました。

写実技法をすでに身につけていたイタリアの画家たちは、油絵メディウムの誕生により制作が更にうまくいき、新しい試みへの刺激とすることができました。ヴェネツィアの画家たちは茶色の地塗りを好み、フレスコ画で使われている白塗りの不透明な技法を続けていましたが、これも暗いイメージにつながりました。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci 1452 - 1519)の独特の「スフマート」という技法は、油絵の性質をうまく利用しており、光と影の緩やかな変化により柔らかく繊細な肌の質感を表現でき、絵画に柔らかで神秘的な雰囲気を与えています。「アテナイの学堂」などの湿式フレスコ画で有名なラファエロ・サンツィオ(Raffaello Sanzio 1483-1520)は、油絵の表現技法にも優れていました。彼は先人の知恵と経験を結集し、円熟な写実技法を生かしてルネッサンス期の古典的価値観と独創的な発想を融合させました。例えば彼の「聖母子」は、純善、純美の人間像を表現しています。肖像画は高貴な顔つきであり、衣装や物の質感は細部まで忠実に再現されています。 ラファエロの晩年の傑作「キリストの変容」は、2つの場面が互いに響き合いながら組み合わされており、人間のダイナミックな表情や身のこなしは、この絵を魅力的なものにしています。人の心を動かす表情や身体表現は、ルネッサンス期の油絵の成功の集大成です。

ヴェネツィアの画家たちは、裕福な商人の邸宅の壁に飾る大画面作品を制作することが多かったため、画板からキャンバスに置き換えることで、大型の油絵を多く制作しました。 キャンバスは次第に普及し、油絵の主な基底材となりました。同時に、油絵の持つ利便性や表現力により、他の絵画技法に代わる主流として選ばれることが多くなっていきました。

「理想美」と写実性の両方を持ち合わせた古典精神

写実主義がルネッサンス絵画の大きな成果であることは確かですが、ルネッサンスには古典的精神の復活という意味も含まれています。古典精神とは、古代ギリシャ・ローマ芸術における完璧な形と永遠の価値の追求に由来し、合理性、明快さ、秩序、比率の調和、構造のシンプルさとバランスを重視し、精神的には高貴、尊厳、冷静、抑制といった全体的な美しさを提唱しています。つまり、芸術は自然を写実的に模倣するだけでなく、自然の造形から完成形や理想の類型を提示し、高貴で永遠の精神的価値を獲得しようとするものなのです。そのため、古典様式の特徴は、形の完璧さ、静寂と抑制、優雅さと安定性です。古代の遺物の発掘に端を発し、理想的な美しさと写実性を兼ね備えた絵画により、ルネッサンス期は後世の画家たちの手本となるような空前の偉業を成し遂げたのです。ルネッサンス期のイタリア人画家たちの活躍により、ヨーロッパ各地から多くの芸術家たちがイタリアを訪れ、古代の遺物を研究し、新しい技術や知識を身につけました。 その結果、写実的な理想を掲げた古典的な油絵がヨーロッパ中に広まっていきました。芸術の伝承という点では、芸術的才能の育成に特化した美術アカデミーが現れました。

古典精神とアカデミーの芸術

イタリアのジョルジョ・ヴァザーリ(Giorgio Vasari,1511-1574)は、1562年にフィレンツェで最初のアカデミア(Accademia dell’ Arte del Disegno)を設立し、学生たちは解剖学や幾何学を含む絵画の技術を学びました。10年後、ローマに芸術理論と教育に重点を置いたアカデミア・ディ・サン・ルカ(Accademia di San Luca)が設立されました。 ルイ14世の時代、フランスはアカデミア・ディ・サン・ルカを手本として、1648年に「王立絵画彫刻アカデミー」[2]を設立しました。

アカデミーの芸術継承の理念は、絵画は合理的基準に基づいていなければならないというものでした。正確さとリアリティを実現するために、遠近法、数学的な人体プロポーション、幾何学的な安定構図、正確な構造、明暗表現など、すべての要素が重要な基礎トレーニングとなっていました。その後、フランスのアカデミーのスタイルと教育方法を模倣して設立されたアカデミーは、ヨーロッパ中に広がりました。たとえば、英国の王立美術院はその1つです。これは、学校制度のもとで西洋絵画が正式に訓練され、理論的、学術的な方法で発展し続けてきた芸術的伝統です。 フランス・アカデミーの理念に多大な影響を与えた17世紀のフランス人画家プッサン[3]は、「絵画は、その知的意味合いを伝えることができる構造で表現された、最高の道徳的意味を含まなければならない」と述べています。アカデミーの教育理念では、芸術創作は、備えるべき写実的技術に加えて、古典精神を取り入れ、信仰や道徳などの正統価値を伝え、社会に対して潜在的に影響を与えるものでなければなりません。

18世紀半ばにポンペイなどの古代文化遺物が発掘されたことをきっかけに、古代美術の研究に再び火がつきました。人々はルネッサンス美術を鑑賞して学ぶだけではなく、ギリシャやローマの古典美術から直接学ぼうとしました。19世紀初頭、ナポレオン[4]が権力を握っていた頃、彼は古代の壮大さと高貴な精神を持った理想的な芸術を提唱し、専門家や学者に古典芸術の研究と収集を促し、新古典主義の推進への努力を惜しみませんでした。新古典主義の精神は、古物を直接模倣することではなく、その美的本質を模倣することにあり、特に高尚な道徳と厳粛さ、真剣さ、そして理想と信念への献身のリアリズム精神を強調しています。

フランスの画家ジャック=ルイ・ダヴィッド(Jacques-Louis David,1748-1825)は、ナポレオンから宮廷画家に任命された後、古典的写実主義の精神で画壇をリードしました。絵画の題材においてダヴィッドは考古的で真に迫る写実描写にこだわり、しばしば古代の神話や伝説、歴史上の英雄や現実の重要な出来事を題材にして、厳粛で劇的に人類の崇高な美徳や感情を浮き彫りにし、過去に学び、世界を教育することを目指しました。形の面では、理性の表現を強調し、ルネッサンス期の素描を基準に、厳密な構図で、形と色彩及び明暗の全体的な調和を重視し、構図は精緻で単純と明晰の古典的な特質を持っています。

最後のアカデミー芸術

正統派芸術が堅持した理念はアカデミー教育によって支えられていましたが、それは道徳および世俗品位の低下と戦ってきました。

19世紀末のフランスの画家、ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1825-1905)は、生涯にわたってアカデミーの芸術様式を貫き、台頭してきた印象派に対抗していました。ブグローは生徒たちに「美と真を求めなければならず、作品は極致に達しなければならない」と語っていました。イギリスのレイトン(Frederic Leighton1830-1896)やオランダのサー・ローレンス・アルマ・タデマ(Sir Lawrence Alma-Tadema 1836-1912)など、ブグローと同じように歴史的使命に徹した画家は他にもたくさんいました。彼らは健在の時には有名でしたが、後に保守的であると見なされ、美術史によって無視されることさえありました。実際、ブグローの人物写実的な技法は古代の人々を打ち破った所もあり、特に女性や子供たちの美しいイメージ、透明で繊細な肌の質感、無邪気で感動的な表情などは、リアルで美しい生活面に近づいているように感じられます。しかし、後期アカデミー美術は美しさだけがありますが、深い意味合いや感動的な力がないため、理想美と写実技法の長所を生かせず、絵画芸術の新たなピークを作ることができませんでした。

3.人物画の重要性

東洋画、西洋画ともに、人物画は最も重要であり、最も早くから発展したテーマでした。それは、人々が自分たちの最も身近な対象を描くことに慣れているからであり、一方で芸術と信仰は密接な関係にあるからです。人類の真の芸術は、まず神々の神殿に現れ、古代の人々は、神々が自らの姿に似せて人間を創造し、その表現が人間の姿になると信じていました。 ルネッサンス期には、写実主義が進歩し画家たちは神をその真の完全な姿で表現するだけでなく、厳粛さ、慈愛、聖なる栄光のイメージで神を讃えることができるようになりました人体は神が創造したものであり、この世で最も完璧な生物であることから、芸術としての完璧な人体の探求もルネッサンス期の芸術家たちの努力の対象となったのです。レオナルド・ダ・ヴィンチが人体のボディ・ランゲージ内心を表現したのに対し、ミケランジェロは人体という唯一の題材で精神的な思想を伝えようとしました。彼の人体芸術は、美しさ、動き、精神、力強さなどの表現において最高の域に達し、後世に大きな影響を与えました。 しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチが光と影の雰囲気作りを重視したのに対し、ミケランジェロは人体の構造や動きを重視し、両者とも人物の肌の色や質感を軽視していました。

人物の写実技法は時代とともに徐々に進んできましたが、その写実性や厳密さの度合いは時代や場所によって異なる。時代や地域のスタイルが異なるため、写実性や厳密さの度合いも異なります。ルネッサンス期には、画家たちはすでに人物の形と心を生き生きと表現できるようになっていましたが、フィレンツェの画家たちが素描や構造に重きを置いていたのに対し、ヴェネツィアの画家たちは色彩豊かな表現を好んでいました。その後、 絵画のサイズが大きくなるにつれ、絵の筆致は、木製のパネルに描かれた初期の油絵ほどきれいで繊細ではなく、より単純になりました。新古典主義時代は、ルネッサンス後の人物写実のもう一つの頂点です。たとえば、ダヴィッドの描く人物像は、リアルで生き生きとしているだけでなく、鮮明なイメージで、人間の尊厳や道徳的な感情が表現されており、人間の心を昇華させる精神力となりました。一方、画風が情熱的なロマン派の画家たちは、新古典派時代と比べると、明らかに人物の構成や筆致の調子に劣り、時代の嗜好の違いや絵画の基礎技術の差を反映しています。

人間の美徳や高貴な情緒を表現する正統派絵画では、人物の表現が絵画の魂となるのです。人物が生き生きとして真に迫っているかどうかが、絵の出来栄えに直結するのです。素晴らしい人物表現は、リアルさと迫力で心を直接揺さぶり、言葉では表現しにくい効果をもたらすことが多く、絵画芸術そのものの良さを浮き彫りにします。

正統な芸術の価値感への回帰を期待

芸術の発展の歴史から見ると、正統派の絵画が提唱する客観的な写実技法と純粋な善・美の内包は、いつの時代でもすべての人々に受け入れられ、喜ばれ、時間や空間の変化によってその価値が失われることはありません。それは、人間の善良な本性に沿ったものであり、芸術の永遠の基準であるからです。

芸術は人間社会に潜在的な影響を与えており、その影響は計り知れません。道徳や良心、社会秩序の再生が切実に求められている今日の時代において、芸術家には社会に対する責任があります。今日の芸術的な創作方法は多種多様であり、ジャンルも目まぐるしく変化しています。しかし、どのようなものが人々の心に響くのか、自分自身に問いかけてみてください。社会に良い影響を与えるものは何か?

そして、何世紀にもわたって語り継がれる、真の不朽の名作は何なのか。 私たちは、正統な道徳観を継承し、芸術における純粋な真・善・美を促進することが、社会の利益と世界の明るい未来のための基盤となると信じています。志ある芸術家たちが「人物写実油絵コンクール」という機会を通じて、芸術家としての使命を見出し、歴史に大きな栄光をもたらすことを心から願っています。

 

注釈:

[1]「写実」という言葉は、一般的に2つの意味で理解されています。第1に、視覚的写実、つまり自然物をリアルに模倣して視覚的なリアリティを実現すること、第2に、社会現象の写実であり、様々な社会階層の実生活や多様な人間性を深く描き出すことです。本文における写実は、主に前者について述べています。

[2] Académie royale de peinture et de sculpture,1803年にナポレオン政権下で王立絵画・彫刻アカデミーは、1669年に設立された「王立音楽アカデミー」、1671年に設立された「王立建築アカデミー」と統合され、フランス芸術アカデミーとなりました。

[3]ローマでイタリア・ルネッサンスの巨匠たちの理論と作品を学び、特にラファエロを敬愛しました。彼は、絵画には最高の道徳的内容が含まれ、その知的意味合いを伝える構造で表現されなければならないと考えていました。絵画は鑑賞者のためになるような筋の通った表現形式にするために、蝋の模型を使った小さな舞台セットで構図や照明を練習し、それをもとに無数の練習画を描き、最終稿を完成させました。1642年にローマに渡り、プッサンに4年間絵画理論と技法を学んだシャルル・ル・ブラン(Charles Le Brun 1619 ~1690)は、ルイ14世の時代にアカデミーの院長に就任すると、アカデミーの規則を定め、フランス・アカデミーの方向性を示し、後年の新古典主義の画家たちの台頭に貢献しました。

[4] Napoleon Bonaparte,1769~1821年

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